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 ある町の首長候補予定者の主張を聞く機会があった。
慣れないスピーチのようだったが、逆に彼の真剣さが伝わってきた。
 その声には、町への熱い思いが感じられ、主張には「オレがこの町を救う」といった強い意志と、自信が満ち溢れていた。
 彼は、そのスピーチ終盤の締めくくりに「自分が町づくりにのめり込む」きっかけを話し始めた。

 小さい頃に、稲刈りが終わると家の前にズラーっと貸し切りバスが並んだ。そのバスに友だちのお父さんたちが静かに重い足取りで次々と乗り込んでいく。
出稼ぎに行くためのバスだ。残された家族が泣きながらそれを見送っている。父親の中にも「行ぎだぐねぇーっ」と泣き叫ぶ人もいたりして、その場は「人生劇場」さながらの光景だった。
 彼らは春になるまで帰らない。間もなくやってくる厳しい冬を、家長なき家で不安を抱えながら乗り越えていかなければならない、「雪とげれば、父ちゃんまだ帰ってくる」とじっと耐えながら…。
 でも春になって、ちゃんと父親が帰ってくる家庭はまだいい。過酷な環境で働いていたのか、中には「お骨」になって帰ってくる場合もあった。
 そんな家族の悲しみや苦悩を何度も間近に見てきて「こんな地域をなんとか変えたい」と心に決めた。その後大学に進み地域社会学を学び、役場職員となり、30年近く町民のために、と活動させてもらってきた。その思いの延長線上に今回の立候補がある、と。

 感動した。こういう人が首長になれば、町は変わる、と思った。詰め掛けた聴衆の中には、涙をこらえきれずハンカチで目を押さえる人たちも多数見受けられた。
こういう人と一緒にまちづくりの仕事ができれば、どんなにいいだろうかと本気で思った。

…僕も、がんばらないと。

 
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