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2008.05.29 まさおくん
 一つ年上に「まさおくん」という憧れの少年がいた。学校では、勉強もできないし、図工も得意じゃない、かけっこも大して早くないし、かといって「イケメン」かというとそうでもない、一言でいえばほとんど目立たない少年だった。
 ところがこの「まさおくん」一旦学校から離れると「スーパーマン」に戻る。
彼の活躍の場は学校以外の全てのエリアだった。野、山、川、温泉街・・・所狭しと飛びまわるのだ。野山では「サル」のように素早く、川ではまるで「河童」、温泉街では「忍者」そのものだ。
 虫採りに裏山に登れば、うまく掴まえられない僕らに無言でお目当ての虫を採ってくれる。前日に仕掛けたタヌキやイタチを獲るワナを見せてくれたかと思えば、気付かぬうちにリュックが「山菜」でいっぱいになっている。旅館に売って「小遣い稼ぎ」をするためだ。
 実は彼、まったく泳げない。ところが、いざヤス(魚を突く道具)を握ると、水中を河童のように動き回る。泳げないのに「ざっこ突ぎ」のなぜか名人なのだ。突いたカジカはやっぱり旅館に売る。僕がようやく一匹しとめる頃には、彼の網は満杯になった。
 今から思えば、彼が僕らと遊ぶのは「子守り」の感覚だったのだろうか。行動と思考のレベルがまったく違っていた。
 だから「学校」なんかで、満足出来るわけがないのだ。「自然」が彼の学校だし、遊び場だし、生活だったのだ。

 そんな「まさおくん」と先日、30数年ぶりに会った。
開口一番「山さ行ぐが?コシアブラいっぱい採ってけっぞ…」
 何10年経っても、彼はカッコよくて、たのもしく、五十路を越えた僕は今でも「子守り」の対象なのだ。

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