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 実は、ちょうど一年前の8月に女房がトリミングの店をオープンさせた。開業前に税理士の友人に相談しに行くと、計画書に目を通しすぐ「これは、イケるでしょ!」と太鼓判を押した。
 しかし市内の人たちの目は冷ややかだった・・・。

 
 彼女は、休業する2年程前から「自分が生活するお金は、自分で稼ぐ!」と啖呵を切り、突然トリミングの学校に通いはじめた。おそらく、書店をつぶし借金をたっぷり抱える情けない旦那には、もう頼れないと判断したのか「火事場の馬鹿力」で一気に開店させてしまった。

 子どもの頃から「人より犬との方がコミュニケーションが取れる」というほどのイヌ好きで、街で飼われているイヌの名前はほとんど知っていて、ヒマさえあれば「巡回」していたそうだ。ひょっとすると五十路にしてようやく「天職」と出会えたのかも知れない。
 たまに店をのぞくと、決して大人しいイヌばかりではないようで、なかなか言う事を聞いてくれない「かわいい」わんこたちと、汗まみれでジャレついて、いや格闘してトリミングをしているのを見ると「こりゃ、大変な仕事だわー」と思うが、本人は至って楽しそうである。たとえガブッと噛みつかれても…優しく「こらぁ~っ」ってカンジで、血だらけでニコニコしている。
 「こいつ、もしかして馬鹿か、Мじゃねーの」と思ってしまうくらい、実に楽しそうなのだ。事実わんこといる時間が人生で一番楽しくて、できれば人とは関わりたくないと、はっきり公言してもいるのだ。

 人生とは不思議なものである。もし書店経営が順調だったなら、おそらく彼女は今も普通に「本屋のおばさん」として、週刊少年ジャンプを平台に積み上げていたはずである。経営が厳しくなり休業を決めたからこそ、心の中にあった「トリマーの道」が浮上してきたのではないだろうか。

 ちょうど一年目、ようやく軌道に乗りつつあるような気配だが、本人は「楽しいけど…完全にワーキングプアー、ほとんど利益が上がらないんだもん…」などと、ボヤく。友人の税理士が太鼓判を押したのは計画書にある「価格」を見てのことで、現在のサービス価格を見ての判断ではない。
 「じゃワンコイン(500円)程度値上げすれば、噛まれた時の治療費ぐらいにはなるんじゃないか」と、恐る恐る言うと「そんなことしたら、トリミングの回数が減ってワンちゃんたち可哀そうだべやー!不衛生になって寿命縮んだらどげすんなぁー!ヒドイやーっ!!!」
 …ひどいやーって、そりゃこっちのセリフである。家に帰ってくるとずっとボヤくから、ちょっと口開いただけなのに、いきなり噛みついてきやがって…。

 まぁ、わんこの身になってしか考えられないっていうところが「天職」の条件なのかも知れないから、このまま「猛犬」女房を、しっかりと距離を取りつつ、気を抜かず見守っていきたいと思う。



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