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2011.02.05 「格闘」
 2月1日、僕は用事があって街中にいた。その日は一日商店街を回る予定だったが、「ハウスの野菜死んでしまうがら、水汲み行ぐぞ!」という「緊急電話」で、急遽予定を変更し実験場に向かった。


 予定では、川からポンプで揚水し、ハウス内の作物に水を供給するはずだった。しかし、ポンプのトラブルで揚水出来なくなり、そこからは「人力」で汲み上げることになった。
 いつもどおり土内集落のはずれで、I先生を待っていると再びケータイがなった。
「土内には着いたが、クルマの鼻先に民家の屋根から雪が落ちてきて行けなくなった…」
慌てて現場に行ってみると、大型ダンプに満杯になるほどの雪が集落の中を走る一本道を塞いでいた。
「あと1秒早かったら…死んでた。」
クルマは、突然硬くて重たい大量の雪にドンと突っ込んだらしい。人の命運はたった一秒の中にあるのだ。
 たまたま近くに除雪車がおり、その雪は程なくして取り払われ、実験場に向かうことが出来た。
「また、何があるかわからない…気をつけて行きましょう。」
と、気合を入れ直して「かんじき」を履いた。
スノーシュー
「洋風かんじき」スノーシュー、これがなければ新雪はどこまで抜かるかわからない。

 雪は降っていなかったが、昨日までの新雪は1メートルを超えるほどで、「かんじき」を履いていても、ひざ上あたりまでぬかった。I先生と先頭を交代で先に進んだが、100メートルほど歩くと、心臓は飛び出すかというくらいボッコンボッコンと暴れ、そこらじゅうの酸素全部を吸い込んでやろうと言わんばかりの激しさで呼吸をしなければならなかった。
雪原
ここは残り約1キロの地点。中央に見える山の麓あたりに実験場がある。

 1時間半かけてハウスに到着すると、休む間もなく「水汲み」だ。それも家庭で灯油を入れている20ℓポリタンクで川から汲む…何度も。

水汲み
川から水汲みの雪道を見上げると、お日様が励ましているのか、「バカ」じゃないのと笑っているのか…。


 その日は、7回くらい往復して水の補充を終えたが、すべてはこの厳しい環境の中で一生懸命に育とうとするカワイイ作物のためである(実際には、暖かいハウスの中でぬくぬくと育っているが…)。

タラの芽
タラの芽

作物
これは…なんだっけ(専門が水汲みなもので…)緑が眩しいくらいでしょ(小松菜だそうです)。

 前にも書いたが、僕は議員として汗のかき方が違う、のだそうだ。議員はどういう汗のかき方が理想とされるのかはわからないが、自分は寝っころがりながらあれこれ指図や批判をする人たちよりは、まだましな方ではないか、と思う。傍から見れば、バカなことやってると思われようが何しようが構わない。
「これでいいのだ」と前に進もうと思う。

 そういえば、高校の頃突然ボクシングを始めた時、顔などにアザを作って学校に行くと「人から殴られて、何が面白いんだ。」と友達からよく言われた。いちいち説明するのも面倒で「そのうち、わかる」と心の中で思っていた。別にわかってもらわなくても全然構わなかったのだが、いつもそう思っていた。階段を昇り、四角いリングの中に入る恐怖を超えたものにしかわからない「充実した時間」は、数10年経った今でも忘れることが出来ない。
 
 今回のプロジェクトは、その時の「時間」に似ているような気がする。だから、わかってもらわなくていい。

 僕らの「格闘」の意味は「そのうち、わかる」

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