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 魚屋の若旦那、通称「しんちゃん」は、今や、もてなし金よう市に来てくれる「おかあさん」たちのアイドルだ。
 去年の7月28日から始まった金よう市は、新庄まつりと正月を除いた、毎週金曜日に必ず開催してきた。

 商店街全体でお客様を「もてなす」訳だが、近隣の方々にとりわけ人気なのが「魚屋のしんちゃん」だ。

 商店街が衰退し、鮮魚店が街から跡形も無く消えてしまって、クルマという移動手段を持たない人たちから、街に生鮮品を買える店がなくて困っているいう話をよく聞いていた。

「なんとかしないと」といつも思っていた。

 そこである時「じゃ美味しい魚を街に持ってきてもらおう」

と思いたち、日頃、熱心に軽自動車で外販している彼に思い切って相談した。


「あんまり儲がんねがも知んねげど、北本町さ魚売り来てけんねが。」

「そういうことならもちろん、協力させてもらいます!」

二つ返事だった。うれしかった。

 それから8ヶ月、一度も穴をあけることなく参加してくれた。
もちろん新鮮な魚を提供してくれるから、お客さまもどんどんついた。
いまでは「行列ができる魚屋さん」だ。

 お客様の中には、「今日なんにも買わんねげど、しんちゃんの顔見に来たぁ・・・今度買うがらな」とわざわざ逢いに来る方もいて、まるでキムタクだ。



 そんなしんちゃんの爺さまが先日亡くなった。

その日、彼から「金曜日は、じーちゃんの葬式だから、今週は休ませて欲しい」と連絡が入る。

彼は、何度も何度も「すまない、ごめんなさい」を繰返す。

 もちろん承諾した。しかし「魚屋さんを楽しみに待っているお客様をどうしよう・・・」瞬間、頭を掠めた。


 しんちゃんの代わりは「いない」けど協力してくれる「魚屋さん」はいるはず、と市内はもちろん酒田の知人にもお願いしてピンチヒッターを探した。

けれど、なかなか見つからず、頭を抱えていたそのときケータイが鳴った。

しんちゃんからだった。

「心配かけてすみませんでした・・・いつもどおり金よう市に出ます。」


無理しているな、と思った。でもよくよく聞いてみたら

「爺ちゃん、死ぬ間際に『俺が死んでも【金よう市】さ行げよ、待ってるお客様ば大事にしろな』って」と父から言われ、すぐに決断したらしい。・・・これって「遺言」だよ、どう考えても。


 その日は、葬儀が1時からなので10時~12時までの2時間限定の営業だった。そのせいもあってか黒山の人だかりとは、このことかと言うほどの混みようだった。

 なかには彼の祖父の死を伝え聞いてか供物を持参したお客様もいて、あらためて「しんちゃん」の存在の大きさを実感した。

「しんちゃん」は28歳、「今の若いモン」だ。
でも優しく、可愛く、カッコいい。

22歳も下の若僧は・・・僕の憧れだ。


しんちゃん爺ちゃんに合掌。
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